業務プロセスの概要
業務プロセスの可視化は企業資産づくり
企業の経営戦略・事業戦略を実行していくためには、様々なリソースを効率的に活用することが重要です。しかし、実際、現場が回している業務というものは経営者や他部門からは見えにくいものです。また、業務を口頭で説明したとしても、同じ解釈をしているかわかりにくく、業務マニュアルなどの書類を用いたとしても、その共有は難しいとされてしまいます。従来、日本は仕事のやり方やノウハウは組織として共有されるよりも、属人的に蓄積される傾向が強く、この暗黙知をいかに顕在化させるかが大きな課題でした。
業務プロセスの可視化とは、「見えないものを見えるようにする」こと。すなわち、暗黙知を形式知にすることとも言えます。業務プロセスが存在しない企業はありません。可視化により出来上がった業務フローを企業がいかに有効活用するかが企業の価値向上に大きく寄与するとともに、プロセス構築力やプロセス改善力は今や重要な企業資産と言えます。
業務可視化の目的
(1)問題発見・問題解決のツールとして
業務プロセスの可視化の目的は企業によって様々ですが、代表的には大きく2つに分類されます。
1つ目の目的は業務フローを作成することです。もう1つの目的は出来上がった業務フローを活用することです。下図をご覧ください。
業務フローを作成することが目的の場合は、図の左上の領域が該当します。代表的なものとして内部統制が挙げられます。
一方、業務フローを活用することが目的の場合は、業務プロセスの可視化(見える化:当社では業務モデリングと呼びます)は最初の通過点に過ぎません。出来上がった業務フローはあくまでも現状の業務フローなので、そこには多くの問題が含まれています。したがって、出来た業務フローを問題発見や問題解決のツールとして用います(図の右上の領域が該当)。生産性を高めるための「業務改善・効率化」のときに用います。また属人的な業務をなくすことや業務をアウトソーシングするのために行う「業務の標準化」のときにも用います。この業務標準化によって整理された定型業務は、RPA(Robotic Process Automation)、基幹システム導入やリプレース等の「情報システム対応」の対象業務となります。業務のどこまでをシステムで対応し、どこをオペレーションとして残すかの検討が重要です。
また、図の右下の領域で示す「経営課題」や「組織課題」の解決に直結することも少なくありません。なぜなら、企業は売上や利益、品質やコスト、環境変化への対応、新規事業促進等の企業価値を高めることが最終目的だからです。同様に、企業が真価を発揮するための組織設計や意思決定のあり方等は現場の業務プロセスと関係が深いものです。「業務改善」によって業務プロセスが変更になれば、業務範囲の再定義や責任・権限も見直さなければなりませんし、規程や制度との整合性も欠かせません。
(2)コミュニケーションツールとして
図の左下は「業務プロセスの可視化(業務モデリング)」によって間接的に効果が現れる領域で、「業務改善」ではより顕著に効果が現れます。組織が縦割りであればあるほど、部門間の連携はとりにくく、密なコミュニケーションがとれていません。
業務プロセスは組織を横断的(横ぐしを刺す)にまたがる特性上、コミュニケーションツールとして応用が期待できます。自部門の業務を前後工程の部門に知ってもらう、前工程や後工程の業務プロセスを知ることでより部門間連携がスムーズに進む等です。何もない手ぶら状態でのコミュニケーションは成り立ちにくいものです。自らの手を動かし業務プロセスを可視化することで出来た業務フローを見ながら部門を超えて一緒に考えることでコミュニケーションをはかります。
(3)主体性を促す
業務の可視化は、主体性の側面でも効果が期待できます。
自分で業務フローを作ることで、いくつかの効果を得ることが出来ます。日頃何気なく行っている業務を一つひとつ書き出すことで、自分自身の業務を客観的に見ることができます。また、自らの手を動かすことで積極的に「考える」ことを行います。自分の仕事の意義や役割、もっと広い視野では組織の機能や責任と権限等の考えを広げることが出来ます。つまり、業務フローを自分で作ることは、問題意識の醸成や「考えて動ける人材」を育てる一助になります。
業務プロセスを可視化(見える化)し、業務フローを作り上げる過程においては、部門や個々人でコミュニケーションを図り、話をして、伝えることが重要となります。作り上げた業務フローは、問題を発見し、課題を解決していく業務改善や業務標準化を進めるときにも活用できます。自発的・主体的に可視化を進めることで、問題の洗出し時に現場の問題だけにとどまらず、経営や組織についての問題(疑問や不満、不安など)も洗い出すことができます。この問題には、品質や環境に対するものも含まれるでしょう。
業務プロセスのサービス一覧
カレンコンサルティングのワンストップサービスは、業務プロセスの可視化(業務モデリング)、業務改善、業務標準化にとどまらず、「情報システム化」に向けたご支援までを、業務に関わるソフト面(社員の自発性・主体性、組織風土)を重視し、成果を出すことにこだわったサービスです。
Ⅰ:業務モデリング
業務モデリング手法(BPM:Business Process Modeling)を使い、個々の業務プロセスを一連の流れとして見える化します。
業務プロセスを見える化することにより、問題点の早期顕在化が実現できます。また、コンプライアンスのリスク低減、業務品質向上、業務効率向上によるオペレーションコストダウン、情報システム化を行う際の業務要件の基本情報を得る等、さまざまな効果があります。
業務モデリングのアウトプットは、業務フロー、業務記述書、リスク/コントロールマトリクス(RCM)など多岐に渡ります。業務モデリングを進めるにあたり、業務プロセスは「正しく表記される」ことが求められます。そのためには「現場の社員自らが業務フローを書く」ことが大事です。このようにすることで、自部門の業務改善をはじめ業務設計や標準化設計などに主体的に取り組む動機付けへとつながります。
Ⅱ:業務改善
現状の業務プロセス分析が終り、改善業務プロセスを検討する段階では、現状発生しているトラブルや品質低下、非効率が発生している業務プロセスが明確になります。同時に業務プロセス以外の様々な問題も明らかになります。原因をしっかりと掘り下げて、問題解決にあたります。しかし、業務改善に取り組む、または推進するためには組織の利害関係、現場のモチベーションなどが障壁になることが少なくありません。業務改善を通じながら、意図的にコミュニケーション促進の場を設けて、部門間の連携や協力関係の構築を図っていくことも重要です。
カレンコンサルティングは、業務プロセスの改善や設計と一緒に部門間の連携やコミュニケーションの促進もお手伝いいたします。
Ⅲ:業務標準化・プロセス設計
業務改善で行う業務分析に加え、標準化に向けた各種分析を業務フローを用いながら進めます。業務によっては、属人的な業務が多く存在します。この属人業務は個々人の創意工夫の結果、出来上がった業務プロセスであることも少なくありませんので、何でもかんでも業務標準化すれば良いというものではありません。では、どこから手を付けたら良いのでしょうか。
カレンコンサルティングは、最初にきちんと業務標準化のポリシーを策定します。そして、どのような切り口で業務を最適化し、何を基準に標準化すれば良いかを明確に定めます。それから、業務標準化のプロセス設計に臨みます。
Ⅳ:主体的な改善活動
業務改善の必要性はわかっているようだが現場が思うように動かない、強制力を働かせたところで”やらされ感”の存在は、主体的な改善活動に対してマイナス要因として働きます。
カレンコンサルティングでは、「現場をいかに動かしていくか?」 「他人事から自分事にどのように変えていくか?」――そして、実際に可視化を行い、業務改善を進めていく中で、「どのようにモチベーションを維持しつつ期待効果を出していくか?」――を理論的根拠をベースに、より実践的に支援していきます。
Ⅴ:業務モデリングツール
業務モデリングを効率的に進めるために、専用のツールを用いています。
カレンコンサルティングでは、業務フローを「作っておしまい」ではなく、「作るところから一緒に考え、作り上げたものを活かしていく」ことに大きな意義があると考えています。
そのためのツールとして『iGrafx』を用いています。操作性に優れて、業務フローの作成だけでなく、継続的なメンテナンスの負荷も大きく軽減します。